結婚にいたるプロポーズ

これは非常に有名な歌ですが、やはりプロポーズの歌だといわれています。春らしい力にあふれた情感があり、『万葉集』の中では、私はまつ先にこの歌を暗謂しました。歌の意味は、籠を持ち、へらを持って、丘で春の菜を摘んでいる娘さん、あなたの家をお訪ねします、お名前を教えてください。この大和の国はすべて私が治めているのです。私は天皇なのです。さあ、私から名乗りました。家も名も。ですから、どうぞ、あなたのことを私に聞かせてください、です。出会いのチャンスはここにあります。→が、そこから先は自分で頑張らなきゃならない。ここを読んでいるあなたなら大丈夫。この当時は、自分の名を名乗り、それから相手の娘の家のこと名前を聞くことは、つまりプロポーズの意味だったのです。これにお答えすることが承諾の返事でした。うらうらとした春の日ざしの下で、一人の美しい娘が若菜を摘んでいます。そこへ白い馬にまたがってやってきた貴公子が、娘の健康そうな横顔に見とれ、ふと馬の手綱をひいて立ち止まりました。見れば見るほどういういしく可憐な娘です。今までのどんな娘にも感じたことのないはげしい胸のときめきをおぼえて、貴公子は思わずプロポーズの言葉を口にしたのでした。と、こんな情景を私は娘時代、一つの憧れとして胸に描いたものでした。『白雪姫』や「シンデレラ物語』の童話にもあるように、女性の夢はやはりどこからかすばらしい王子様が現われて、やさしく優雅な態度で求婚してくれることなのではないでしょうか。ところが、私の夢は、やはり単なる夢にすぎなかったのでした。

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